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2000年3月から施行の
定期借家権制度の
上手な利用法を紹介


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定期借家で新・賃貸生活

期限が来れば賃貸借契約が終了する「定期借家権制度」がスタートしてほぼ二ヵ月。新しい制度を利用する人も徐々に増えてきた。
借り手側の保護が限定されるといわれる新制度だが、自分のライフプランが明確な賃貸派にとっては、交渉次第で有利な期間や家賃などを設定できる余地も大きい。
ただ、あいまいな契約を結んでしまうと思 わぬトラブルを招きかねない。
従来の借家契約との違いを押さえ、よりお得な賃貸生 活に挑戦してみよう。


自己主張を強く
「僕は大学院に進む計画だから、契約期間は二年でなく四年にしてください。家賃は四年分を一括で払ってもいいので下げてもらえませんか」

都内の私立大学法学部に通う上原義人さん(22、仮名)が四月から新しく住もうとしたマンションは定期借家権制度に基づく物件。上原さんは賃貸借契約を結ぶに当たって粘り強く不動産業者、大家との交渉を続けた。
その結果、大家も納得。当初二年契約、月額家賃八万五千円を提示された条件は、四年契約で、家賃も月七万八千円と一割近く下げることにこぎつけた。
上原さんは「定期借家契約の物件はとにかく自己主張して交渉するのが重要。もっと粘れば礼金も安くできたかも・・・」と話す。

三月一日から法制度化された定期借家契約。この契約は定めた期間が終了すれば、大家は再契約を拒否できる。従来の借家契約は借り手が住み続けたいと思えば、大家はよほどのことがない限り契約更新を拒めず、退去してもらう場合は、高額の立ち退き料を支払わなければならないケースもあった。大家は物件を貸しやすくなったといわれる。
実際、日本賃貸住宅管理業協会が会員不動産会社の三月中の契約状況を調べたところ、回答した61社の新規契約賃貸物件のうち早くも4%強が定期借家契約となった。
「単身者向け物件中心にほぼ全面的に定期借家契約にする」という不動産会社もある。

一方、借り手の立場からすれば、長く住み続けたいと考えていても定期借家契約では大家が再契約を拒否して退去させられるかもしれないという不安が残る。ただ、借り手には利点も生まれる。最大のメリットは「契約に当たり借り手側からの交渉の余地が大きくなった」(酒造豊・長谷工総合研究所取締役研究室長)ことだろう


計画性を持って
従来の借家契約では一度、賃貸借の条件を決めてしまうと事実上、改定が困難だったため、大家は定型から外れた契約を嫌がる傾向があった。定期借家契約では契約期間が終われば契約は一度白紙に戻るので、借り手それぞれの要望を受け入れやすくなるわけだ。
そこで交渉でのポイントを紹介しよう。
第一に契約期間だ。従来の借家契約では二年ごとの更新が一般的。借り手のほぼ希望通り更新できるため、二年という期間に問題はない。しかし、定期借家契約では「子供が小学校を卒業するまではここに住む」といった具合に、自分のライフプランを事前に立て、契約期間を住む期間に合わせるよう交渉することが重要だ。

二年を超える契約を結べれば、安心して住み続けられるだけでなく、二年ごとの更新料などが不要になることが期待できる。そのうえ期間中、家賃が上がらないよう固定する余地もあり、交渉次第では従来の借家契約より有利になる。実際、ファミリー向けの賃貸物件で15年間の定期借家契約が結ばれたケースもある。
住む期間が確定できない人は、物件が契約期間終了後に再契約可能なものかどうかをチェックしよう。現在、定期借家契約の物件を大きく分けると、大家が転勤などに伴い一時的に貸す「再契約をしないタイプ」と、賃貸用に建築したマンションなどで「再契約を前提としているタイプ」の二つがある。前者の場合は契約期間が来れば確実に退去を求められる。後者の場合も、注意点が多い。

「あなたが賃料滞納などの問題さえ起こさなければ何度でも再契約できますよ」−
河瀬由美子さん(26、仮名)は不動産会社にこう言われて安心し、東京・足立区のマンションに期間二年の定期借家契約を結んで、四月から生活を始めた。
ところが契約書には、どのような場合に再契約ができないのかについて具体的な記載はない。定期借家契約に詳しい江口正夫弁護士は「これでは大家が賃借人のことが『気に入らない』という理由だけで再契約を拒否しても、裁判では勝てない。
とにかく長く住みたいのであれば、どのような場合に再契約ができないのかを細かく確認し、契約書の中に盛り込んでもらう必要がある」と強調する。

第二の交渉のポイントは礼金、保証金など契約時にかかる一時金や家賃だ。関東地域では一般に家賃二ヶ月分の礼金、関西地域では家賃の五ヶ月分の保証金(契約終了時にそのうちの何割かが差し引かれるケースが多い)という習慣がある。こうした一時金については「大家側の(一度賃貸に出すと、事実上、物件が返ってこなくなるという)リスク分を含んだ契約条件」(大手不動産会社の営業担当)という見方が業界内でも一般的だ。
定期借家契約であれば、こうしたリスクはなくなる。従来の借家契約に比べて、どの程度の値下げになるのかは地域の需給関係や物件の品質にもようるので一概に言えないが、「交渉によって下げられる可能性は大きい」(伊藤英隆・建設省民間住宅企画官)。

このほか「再契約を前提としているタイプ」については、再契約時の一時金の扱い再契約の手数料の有無、借り手側が契約期間中に解約する際の取り決めなどを確認しておくことは必須。少しでも不安な点は不動産業者などに徹底的に質問し、契約書の中に明記させることがトラブル防止につながる。


品質向上も期待
定期借家契約の導入によって賃貸物件の供給量が増えるだけでなく、品質が高まることも期待できる。このほど東京・世田谷区に新築したアパートを四年の定期借家契約にした深山元和さん(55)は「競争力のある物件でないと借り手がつかない」と考え、温水洗浄便座や衣類乾燥機などを標準で装備した。賃貸物件の品質向上の動きは加速するとみらえれている。

ただ、契約したことが厳格に適用されるという点では、定期借家権は借り手に「自己責任」が求められる制度でもある。定期借家契約が不安な人は従来の借家契約を選択することは今なお可能だ。定期借家権制度を賢く利用するには「徹底して契約内容を吟味し、納得いくまで交渉を重ねることが大切」(武田公夫・明海大学不動産学部教授)である点を改めて確認しよう。

必須!定期借家契約のチェックポイント7項目
(1)契約期間をチェック
*自分が住みたい期間との差はないか?
→短ければ、契約期間を長くしてもらう交渉を
(2)再契約が可能なタイプの物件かどうか確認しよう
*転勤者の留守宅など、再契約が出来ない物件は契約満了で必ず退去しな
ければならないことを理解して契約を
(3)再契約の取り決めをしっかり
*再契約可能なタイプでも再契約してもらえない場合がある
*どういう時に再契約でき、どういう時にできないのかを確認
→口頭約束ではなく、必ず契約書に盛り込むよう要求。これををしないと大家のわがままや気まぐれで再契約を拒否されてても法的に対抗できない
(4)再契約時にかかる費用なども最初の契約時に決めておこう
・更新料に代わる再契約料はどのくらいになるのか?
・礼金など一時金は再び必要か?
・連帯保証人はまた必要になるのか?
(5)再契約時の家賃改定ルールも決めておこう
「家賃を上げる、嫌なら再契約をしない」などと大家が主張した場合の対抗策になる
(6)中途解約の取り決めを忘れずに
・定期借家契約で契約書に「1ヶ月前通知で本契約を解除できる」などと記載されていなければ、契約期間内はやむを得ない事情(転勤・病気など)がない限り借り手は解約できない
(7)契約書をよく読み、生活ルールを守ろう
・何よりも自分が納得した上で契約することが重要!
・契約した以上は、契約違反をして再契約を拒否されても文句は言えない
2000年4月30日 日本経済新聞より抜粋




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