 |
今日は、プライベートなことでお話をうかがいにまいりました。 |
 |
どんなことでしょうか。 |
| |
|
 |
実は、わが家で犬を飼っておりまして、毎日犬を運動させるために散歩をしているんですが、最近、犬を散歩させているときに犬が吠え、これに驚いた人が倒れて大けがをし、その賠償責任を飼い主に認める裁判があったと報道されたので、人ごとではないと思ってまいったのです。 |
 |
横浜地裁の判決ですね。あれは、犬が吠えただけで、噛んだり、飛び掛かったりしたわけでもないのに飼い主の責任を認めた珍しいケースです。 |
| |
|
 |
それで、どの程度の賠償が飼い主は命ぜられたんですか。 |
 |
専門誌でその裁判例を確認しましょう。これは横浜地裁民5部・平成13年1月23日判決(「判例時報」1789号83頁)ですね。438万円ほどの支払が命じられています。
被害者が高齢で先天的股関節脱臼という疾病のために歩行困難な人で、外気を吸うために自宅前の公道に出て公道上のミラーポールにつかまって立っているところを、後ろから犬に1回「ワン」と吠えられて驚き、手を放したために転倒して大腿骨骨折の外傷を負ったという内容ですよ。 |
| |
|
 |
犬が1回吠えただけで、そんな責任を負わされるんですか。散歩のとき犬に首輪をして綱を引いてコントロールできれば問題ないと思っていましたが。犬ってもともと吠えるもんじゃないですか。 |
 |
愛犬家はそう言うでしょうね。しかし、世の中犬嫌いの人もいるし、さまざまな人々が利用する公道に犬を連れ出す以上、飼い主に求められる責任は結構厳しいのですよ。判決文では「なるほど、犬は本来、吠えるものではあるが、そうだからといって、これを放置し、吠えることを容認することは、犬好きを除く一般人にとっては耐えがたいものであって、社会通念上許されるものではなく、犬の飼い主には、犬がみだりに吠えないように犬を調教すべき注意義務があるというべきである。特に犬を散歩に連れ出す場合には、飼い主は、公道を歩行し、あるいは、佇立している人に対し、犬がみだりに吠えることがないように、飼い主は調教すべき義務を負っているものと解するのが相当である」と指摘し、「動物を飼っている者は、その飼育から生ずる一切の責任を負担すべきである」と判示しています。 |
| |
|
 |
うあっ、それはキビシイ。犬が1回吠えただけで人が倒れて重傷を負わせるなんて、普通は考えられませんがねぇ。 |
 |
裁判では、犬が吠えたことと、受傷との間に因果関係があるかどうかということも争点になっていました。判決文では「本件犬の行為としては、単に1回吠えたにすぎず、飛びかかろうとしたことはない。しかしながら、本件犬が原告(被害者)に向かって吠えたことは、被害者に対する一種の有形力の行使といわざるを得ず、犬の吠え声により、驚愕し、転倒することは、通常ありえないわけではないから、本件犬が吠えたことと被害者の転倒と受傷との間には相当因果関係がある」旨判示して、結果、これを認めているのです。 |
| |
|
 |
これでは、うかうか、犬を散歩に連れ歩くこともできませんね。そんなに犬を飼うことが重い責任を負うことがあるのだと、この具体例によってよーく分かりました。 |
 |
もともと、民法の718条には「動物の占有者の責任」として、動物を飼育したり保管している者に対して、その動物が他人に加えた損害を賠償する責に任ずると規定して、重い危険責任を負わせているんです。もともと、動物の習性、性癖はさまざまであり、その飼育、保管には常に注意が必要であるところがら、動物が他人に危害を加えたときは、保管上相当の注意をしていたことを証明しなければ、飼主に過失があるとみなされると解されています。今回の判定も、こうした解釈に沿って、飼い主に対して、厳しい責任を求めた裁判例といえるでしょう。 |
| |
|
 |
そうすると、綱を首輪から外すなんて、論外なんですね。 |
 |
そりゃ、そうです。綱をつけていたって、犬をきちんとコントロールできるだけの体力、技術を持っていなければ駄目ですよ。大型犬を子供に引かせるなんて、本当は危ないことこのうえないといえるでしょう。2頭、3頭と一人で綱を引いている人も見かけますが、よぼどきちんと犬を調教しておかないと、万一、他人に危害を加えるような事故が発生すれば、原則として責任を免れることはできないと言っていいでしょう。 |
| |
|
 |
犬を吠えさせないよう調教することまで義務といわれるのですから当然と言えば当然なんですね。家族によく話して、こうした事故が起きないようにしたいと思います。それにしても、ペットを飼うことが、すごい責任を伴うことなんだと改めて認識しました。 |