介護研修

認知症実施者研修に参加して

今回、認知症実施者研修に参加して、認知症について、また介護保険改正内容について講習を受け、現場での活かし方を学んできた。それまで「認知症」と簡単に使っていた言葉には、私が考えていた以上に深いものであった。

まず、認知症とは「脳血管、脳萎縮など原因となる疾患を持ち、器質的変化によって知的能力が衰退して状態であり生活や仕事に障害をきたす障害」である。この障害には、記憶障害、見当識障害、失語、質認、失行、理解力・判断力の低下といった「中核障害」、不安・徘徊・帰宅願望・幻覚・妄想・被害的な思い込みといった中核障害が原因となる「周辺症状」がある。

これら障害によって、生活上の問題が引き起こされてくるが、認知症は全ての能力が低下しているわけではない。社会的技能として「振る舞い」や日常的、習慣的な活動の一部、感情的なコミュニケーション等の能力は、個人差はあるものの残っている。そこで大事なことが、症状や能力の低下に応じた生活環境を整えるということである。

研修では、グループホームのビデオを見た。20分掛け昼食の献立をご入居者と考え、買い物へ行き、レジでお金を払う。買い物もお金を払うことも介護者は見守る。別の場面では、在宅でオムツを使用していた方のオムツをはずし、尿失禁した場合は自尊心を守るため他のご入居者から離すといったケアを行っていた。

このグループホームでは「意向に添ったケア」を行っている。これは、ご入居者の、ありのままの要求に応えるのではなく、主訴とニーズをしっかりつかんでいる。少人数だから出来ることといってしまえばそれまでだが、ここでは認知症で低下してしまった身体能力、知的能力を維持、または生かそうとするケアを行っている。

ここで、施設での認知症高齢者のケアを中心に考えていきたい。施設での「認知症支援」は、集団的「処遇」の中で、個別的な配慮が薄くなりやすい。介護保険法の見直しが行われ、認知症高齢者ケアの基本は「尊厳の保持」であると謳われている。

上記で述べた「症状や能力の低下に応じた生活環境を整える」ことは、一つに、残存能力の活用がある。これは、失ってしまった機能を強要するのではなく、出来ることと出来ないことの区別をはっきり理解する。

また、人格や個性、歩んできた人生の理解を尊重し、個性を活かしていくことに重点を置く。認知症という病気のせいで出来なくなっていることを強要してしまうのでなく、「どうしたら本人が満たされるか」考えることにある。

出来ることを伸ばしていくことは、意欲の向上に繋がっていく。これは本人主体であるのと同時に認知症高齢者ケアの基本である「尊厳の保持」が活かされているケアであるといえる。

施設は専門的な支援であり、人間集団で支えあえるという長所がある。一人一人の個別支援計画を大事にし、個性に注目することで安定した生活を送ることができるのではないだろうか。

次に、入所前に充分な説明を行うことが大事である。例えば、身体拘束についての 説明を行い、重要性を理解していただく。身体拘束を受けた人は身体能力が低下し、転倒事故の危険性が高くなる。現在の危険を守るために、将来の危険を犠牲にするのか、サービスを提供する前に、自立支援の説明、そして認知症とは何か等の説明を充分に行い、理解してもらうことが重要である。

また、家庭での様子など家族からの情報を聞くことにより、得意・好みの理解が得られる。これによって今まで歩んできた環境に似た形を整え、残存能力が活かせるケアが提供できる。

今回の研修に参加したことで、多くのことを学んだ。認知症高齢者と毎日接し、今までの経験があるにも関わらず、知らないことが多くあった。今後、認知症高齢者だけ でなく自立の高齢者の介護予防についても学び、ひまわり板橋で活かせるよう努力をしていきたい。私たち専門職が「認知症とは何か」を理解し、認知症の問題となる原因を追究することが重要である。