医学用語集

0~9、A~Zの医学用語
5年生存率
癌のように予後不良な病気の場合に用いられる治療判定の目安。診断後、治療(手術など)をして5年間たっても再発しなければ、その病気は一応治癒したとみなす。臨床的には1年生存率、3年生存率、10年生存率なども用いられる。
ACTH
脳下垂体前葉から分泌されるホルモンで、副腎皮質刺激ホルモンともいう。コルチゾン、ヒドロコルチゾンなどのホルモン物質の分泌を促進し、リウマチ性疾患の治療薬などに使われている。
ACバイパス
心筋梗塞に対する外科手術。冠動脈の狭窄部に、本人の大腿部静脈や内胸動脈を持ってきて、副行路をつくる手術。川崎病のあとに冠動脈瘤ができた小児の手術でも用いられている。
CAPD(自己携帯式腹膜透析)
腹腔内に透析液を注入し、体内の老廃物を腹膜を介して濾過する家族透析の一つ。
CCU(冠状動脈疾患監視病室)
急性期の心臓疾患の患者を、心電図で危険状態を継続して監視し、適切な治療と看護によって回復させる特別病室。対象となるのは急性心筋梗塞、狭心症発作が頻発する患者、重症の左心不全などである。
CT(コンピューター断層撮影)
人体の同一平面に対して種々の角度からX線をあて、コンピューターで再構成し、輪切り状に映像化する装置。従来のX線撮影に比べ、骨、液体成分、空気などを微妙な濃淡の映像としてあらわすことができる。初期には脳卒中、脳腫瘍などの頭部の診断に用いられたが、現在では全身の撮影が可能となっている。
ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)
膵疾患、閉塞性黄疸の診断に用いる検査法で、十二指腸乳頭部から、内視鏡を使ってカニューレを挿入し、造影剤を注入し、撮影する。
ESWL(対外衝撃波結石破砕術)
腎臓・尿路結石に対して、水中でも高電圧放電で発生する電気水圧衝撃波を用い、体外から結石を破壊する方法。
ESTIABP(内視鏡的乳頭切開術)
総胆管結石などの疾患に対して行われるもので、内視鏡を使って十二指腸の乳頭部を切開して、開腹手術をせずに結石を取出すことができるもの。痛みも少なく手術侵襲も少ないので患者の苦痛が少ない。入院期間も数日で済む。
HL-A組織適合検査
臓器移植の成否は、遺伝的に規定された組織適合の合否によって左右されるが、完全な合致は一卵性双生児以外はまず不可能である。しかし強い適合系で結ばれていれば、臨床的には長期にわたる生着率が得られている。現在、ヒト白血球抗原(HL-A)による方法が世界的に統一されており、これによる抗血清が広く分与され、適合検査として用いられている。
ICU(集中治療室)
日本麻酔学会の定義では、呼吸、循環、代謝など重篤な急性機能不全の患者を収容し、強力・集中的に治療看護する部門、とされている。急性の意識障害、呼吸不全、心臓不全、急性中毒患者、大手術後の患者などが対象となる。
IABP(大動脈バルーンパンビング法)
機能不全に陥った左心室を補助する機械的補助循環法のひとつ。急性心筋梗塞後の左心不全に有効。バルーンは抗血栓性材料でつくられ、大人用は30~40mlの容量がある。大腿動脈を切開して挿入するが、最近では穿刺により経皮的に挿入する方法も普及している。
MRI(磁気共鳴画像装置)
人体の各細胞が持っている磁気性を利用し、強力な磁場内で起こる体内の水素原子の磁気共鳴をコンピュータで映像化する装置。体内の出血部位や、腫瘍組織の検索、従来難しいとされていた脳幹から脊髄までの中枢神経系や、頚部などの病態が鮮明に把握できるようになった。またX線とは異なり、人体に対する影響がない診断法である。
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
食中毒の原因にもなる黄色ブドウ球菌の中で、抗生物質の効かないもの。広い範囲の菌に効くといわれている第三世代セフェム系の抗生剤を多用していると抗生物質のほとんど効かない耐性を持った菌が増えてくる。この菌に感染することをMRSA感染症という。健康な人からも検出されるが発症はしない。抵抗力の低下している患者に感染して発症すると抗生物質が効かないので死に至る場合が少なくない。
PTCD・PTCS・PTCCS
胆石や腫瘍などで胆道がつまると、胆汁が排出されなくなり、閉塞性黄疸となる。皮膚から小さな瘻孔をあけ、胆内胆管にチューブを入れ、胆汁を体外に排出するのが胆管ドレナージ(PTCD)。同じ方法で、胆道鏡(PTCS)や胆嚢鏡(PTCCS)を使った検査も行われる。またこのチューブを使って、閉塞の原因となっている胆石の破砕除去や、腫瘍に対する放射線、レザーの体内照射も行われている。
PTCA(冠動脈血管拡張術)
狭心症、心筋梗塞の原因となる冠動脈の狭窄に対して、先端にバルーンのついたカテーテルを挿入し、狭窄部でバルーンをふくらませ、血管を押しひろげる治療法。
PTCR(冠動脈血栓溶解術)
冠動脈にできた血栓に対して、カテーテルを挿入しウロキナーゼなどの血栓溶解剤を直接、局所投与する方法。全身投与に比べ効果は大きいが、心筋障害の発生から数時間以内に行わないと、血流が再開しても梗塞巣は改善されない。
QOL(クオリティオブライフ)
生命、生活の質の向上。慢性疾患や癌患者などの場合、治療は死に至る段階まで続けられることが少なくない。このような患者では治療を優先させるよりも、苦痛を少なくし、精神的にも充実した生活が送れるようにすることが大切になる。このような考え方からその患者の価値観や日常の質の向上を図り、それとの兼合いで治療をすすめていくという考え方。
VIP(血管作動性腸管ポリペプチド)
消化管、中枢神経細胞、自律神経線維などに存在する活性ペプチドで、血管拡張、血圧低下作用を持っている。ヒト、ブタ、ウシとも構造は同じで、抽出精製され治療法としても使われている。
α遮断剤/β遮断剤
カテコールアミンによる交感神経刺激に対応する器官には、
(1)興奮を起こすもの
(2)抑制を起こすもの
(3)条件によってその両方を起こすもの
の3タイプに分かれる。
また抗アドレナリン剤の作用下では血管平滑筋は収縮、腸平滑筋は弛緩、心臓では興奮が起こる。これらは、カテコールアミンに特異的に反応する受容体があるからだと考えられ、興奮を媒介するα受容体と、抑制を媒介するβ受容体と名づけられている。それぞれの作用を遮断する薬剤をα遮断剤、β遮断剤と呼んでいる。α遮断剤には、バッカクアルカロイド、イミダゾリン系、ハロアルキンアミン系があり、β遮断剤には、ジクロロイソプロテレノール、プロパラノロール、アルプレノロール、ピンドロールがある。
あ~この医学用語
アミロイドーシス
蛋白と多糖類の複合体であるアミロイドが、全身的に神経組織、筋肉、心筋に増加して沈着し、神経障害、心筋障害を起こす状態。原因は不明で、特に治療法はない。それぞれの臓器での沈着程度により病状は異なる。
アルキル化剤
抗癌剤の一種で、多くの有機化合物、蛋白質、核酸の水素をアルキン基に置換し、核酸の合成を阻害する性質を持つ。ナイトロミン、エンドキサン、ニトロソウレヤなどがある。
アルツハイマー病
老人性認知症のひとつで、脳血管性認知症と区別される。脳細胞の変性、萎縮によって起こるボケ症状で現在のところ原因は不明で、有効な治療法はなく、予防法も分かっていない。
インターフェロン療法
ウイルスの増殖を抑える因子として発見されたインターフェロンは、細胞増殖を抑える作用や、細胞分化の促進、抑制をつかさどる働きのあることが明らかになってきた。制癌効果もみられるため癌治療に用いられているがすべての癌に有効という訳ではない。
院内感染
病気の治療を受けている病院などの医療施設で、新たに感染症にかかること。抵抗力の減弱している患者の場合は特におこりやすい。MRSAが大きな原因となっている。
インフォームド・コンセント(説明と同意)
医療現場において、医師が患者に病名、病状などを正しく伝え、医師の提示する治療法について患者の同意を得ることをいう。その内容には検査の目的や内容、治療法や処置の成功の確率および危険性や副作用、またこれらの治療を拒否した場合にはどういう結果が予想されるかなどを伝えること。患者の生命は患者自身が決めていく、つまり患者中心の医療という考えのもとに、医療者は患者に自己決定をするための情報を与えることを意味している。
エタノール注入療法
肝臓癌に対して、経皮的にエタノール局所注入を行い、純エタノールの脱水固定作用によって癌組織を固定壊死にもっていこうとする方法。
温熱療法
高温によって癌細胞を破壊する治療法のこと。癌細胞は高温に弱く、42.5℃~45℃で加温すると死滅する。局所温熱療法と全身温熱療法がある。単独ではなく放射線療法や化学療法と組合せて行うことが多い。加温装置としてはマイクロ波、高周波、超音波などを用いる。表在性の癌に対しては有効性が認められるが、深在性のものにはまだはっきりとした有効性は認められていない。
カテーテル
診断または治療のために、体内のある部分に挿入する細長い管のこと。体腔からの体液の排出、体腔への空気や栄養物、薬液の注入などに用いられる。
カテコールアミン
副腎の髄質から分泌され、心臓の収縮、血圧の上昇を促す動きをするホルモン。分子構造の中にカテコール基を持ったアミンの総称で、アドレナリンとノルアドレナリン、ドーパミンがある。神経伝達物質として、また副腎髄質ホルモンとして重要な役割を果たしている。
カルシウム拮抗剤
狭心症、高血圧症、上室性頻拍症などに使う治療薬。平滑筋の弛緩、心筋の収縮を抑制する働きを持っている。
ガンマナイフ
201個のコバルト60線源から照射されるガンマ線をコンピューターによって腫瘍にだけ集め、その強力なエネルギーで病巣を破壊する装置。放射線治療法では、腫瘍以外の正常な組織に放射線が当たるという問題点があるが、ガンマナイフでは放射線が腫瘍部分に集中して当たるので他の組織への影響が少なくてすむという利点がある。さらにこれまで開頭手術していた症例でも、ガンマナイフの登場によって手術しなくていいケースもでてきた。
寛解
永続的にしろ、一時的にしろ、臨床的に症状が消失した状態をいう。白血病では末梢血と骨髄所見が正常化した状態を寛解期と呼んでいる。
観血的治療/非観血的治療
外科的手術によって出血を見るものを観血的治療といい、内科的治療を非観血的治療という。外科的療法ともいう。
関節鏡
主に膝関節に用いられる内視鏡。特殊なレンズをつけた比較的太めの穿刺針を刺して、内部を観察する。関節内の写真や映像を撮影することもでき、鏡視下生検や、鏡視下手術もできる。
癌の化学療法
抗癌剤を全身投与、または局所投与して癌組織の増殖の阻止、縮小、殺滅をはかる治療法。
癌の免疫療法
体の免疫能力を高め、癌の治療効果を高めようとする治療方法。一部を除いて効果は限定されている。
キューサー
脳腫瘍、肝臓癌の手術などに使う機器で、超音波で腫瘍組織を破壊しながら吸引する装置。血管を切らずに肝切除ができる。
腔内照射(くうないしょうしゃ)
放射線を放出する小線源を直接腫瘍のある体腔内に送り込み、腫瘍部位に多くの放射線を集中させる方法。
血液浄化法
血液の中にたまった病的物質を取り除く浄化法には、透析、濾過、吸着、血漿交換などがある。透析は、血液透析と腹膜透析に分けられ、線維膜あるいは腹膜を介して血液と透析液を交替させ、血中の老廃物を除去するというもので、主に腎不全に用いる。
血液濾過は透析膜より大きい孔の人口膜を使う。透析が小さい分子量の物質除去にすぐれているのに比べ、血液濾過は中分子物質が対象となる。
血液吸着は、石油ピッチ系の造粒炭やヤシガラ炭などの吸着剤に、直接血液を灌流し、一定の物質を除去する方法。
血漿交換は大きな分子量の蛋白や、蛋白と結合した物質を取り除くことを目的としている。方法としては、血漿と血球の遠心分離を行い、さらに半透膜を用いて血漿中の不要な物質を取り除き体内に戻すというもの。薬物中毒、膠原病、骨髄腫、劇症肝炎などに用いられる。
原発性/続発性
病変の原因が、それ自体の臓器を発生母地としている場合を原発性といい、他の臓器の疾患による二次的なものを続発性という。
抗癌剤
大きく分けて、アルキル化剤、代謝拮坑剤、抗癌性抗生剤、植物アルカロイド、ホルモン、その他の6種類に分類され、現在使われているのは約30種。
抗癌性抗生剤
カビのつくる抗癌剤で、細菌に対する作用は知られているが、抗癌作用も注目されている。マイトマイシンC、トヨマイシン、ブレオマイシン、ダウノマイシン、アドリアマイシン、ネオカルチノスタチンなどがある。
膠原病
結合組織に炎症性の変化とフェブリノイド変性をきたす一群の病気で、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、強皮症、結節性多発性動脈炎、リウマチ熱、慢性関筋リウマチの6疾患をさす。共通しているのは、発熱、関節炎、発疹などで、慢性、進行性に増悪する。
ステロイド剤が治療に使われるが、根本的な治療法は未解決。その後、ウェジナー肉芽腫、シェーグレン症候群、混合型結合組織病、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、大動脈炎症候群も膠原病として分類されるようになった。
固形癌
胃癌、大腸癌、子宮癌にみられるように、一ヶ所に固まって発生する癌のこと。治療は外科的手術療法による摘出が原則となる。
骨髄移植
白血病、悪性リンパ腫、再生不良性貧血に対して、正常骨髄細胞を静脈に投与することで、造血細胞などの欠損を補う方法。組織適合性抗原(HLA抗原)が一致した骨髄提供者が望ましいが、完全な一致は難しく、通常は親、兄弟が提供者となることが多い。白血病では、自分の骨髄細胞から腫瘍細胞を除いて移植する自家骨髄移植も行われている。
さ~との医学用語
再生不良性貧血
白血病のような悪性の基礎疾患がないにもかかわらず、骨髄で赤血球、白血球、血小板が生産されなくなる病気。血小板減少による出血、好中球減少による感染症がしばしば死因となる。重症例では骨髄移植の適応となる。
細胞診
喀痰、尿、膣分泌物などから採取したり、消化器系、呼吸器系、胸水、腹水、臓器穿刺などによって採取した細胞を染色し、観察して、悪性腫瘍を発見する診断法。肺、食道、胃、腸、子宮頚部癌の診断に有効。
自己免疫疾患
生体における自己抗原に対する抗体産生抑制機構が破綻することにより、自己の組織のもつ抗原に対して免疫反応がおこり発症する病態、またはそのような免疫反応を伴う病態。疾患は多岐にわたり、全身に病変が広がるものでは全身性エリテマトーデス、混合型結合組織病、慢性関節リウマチ、シェ-グレン症候群などがある。心血管系ではリウマチ熱、肺・腎系ではグッドパスチャー症候群、内分泌系ではバセドウ病、橋本病、アジソン病など、血液系では自己免疫性溶血性貧血、突発性血小板減少性紫斑病、筋肉系性硬化症、皮膚では尋常性天疱瘡などがある。
集学的治療
あるひとつの治療法だけでは治療効果が期待できそうにない場合に、他の治療法方を組合せて治療を行うこと。その場合専門分野の異なる医師が協力して、それぞれの専門知識や技術を結集し、患者の治療方法を話し合い、共に経過観察をして治療成績を向上させようとするもの。たとえば手術を担当する外科医、放射線治療を担当する放射線科医、化学療法を担当する内科医などが協力してその患者に最もふさわしい治療を行う。
重症筋無力症
骨格筋が異常に疲労し、筋力低下、球麻痺、進行すると呼吸筋麻痺によるクリーゼと呼ばれる重篤状態になる。瞼があかないという眼瞼下垂が初発症状であることが多い。原因は、運動神経筋接合部のアセチルコリン受容体に対する自己免疫疾患と考えられ、治療は、坑コリンエステラーゼ剤、副腎皮質ホルモン投与や、胸腺摘出手術、血漿交換療法などがある。
腫瘍マーカー
癌組織が分泌する特異な物質で、血液や病中から検出される。現在癌陽性率が80%以上のものは、肝癌のアルファフェトプロテイン、膵臓癌、胆嚢・肝管癌のCA199、卵巣癌のCA125である。癌組織がある程度大きくならなけらば検出できないこと、分泌量が微少であることなどから、まだ癌診断の決め手とはなっていない。
植物アルカロイド
植物に含まれる強アルカリ性の塩基性化合物。坑癌剤として、ビンクリスチン、ビンブラスチンなどがある。
神経ブロック
神経の走行部や存在部に注射針を穿刺し局所麻酔剤などを注入して止痛をはかる。診断、手術、ペインクリニックなどで用いられる。
人工肛門
直腸癌、直腸狭窄、鎖肛など肛門部の手術で、括約筋が損傷された場合、腸管を体外に引出し、排便を行う。
心室細動
心室が正常な収縮をせず一部分ずつ収縮する状態。1分間170~300のものを心室粗動、300~600のものを心室細動という。心筋梗塞、狭心症発作などにみられ、血液が拍出されないもので数分続くと死亡する。
心身症
心理的な因子が引き金となって、内科をはじめ各科にまたがる様々な病気が発症したり、長引くことに大きく関わっている病態をいう。主なものは、狭心症、高血圧、気管支喘息、胃・十二指腸潰瘍、関節リウマチ、甲状腺機能亢進症、偏頭痛、円形脱毛症などがある。
心臓カテーテル検査
上下肢の末梢血管から細い管を心臓・大動脈・冠動脈・肺動脈に挿入し、循環系の血行動態、機能、電気生理、代謝、組織診断などを行う検査法。
シンチグラフィー
人体にはほとんど無害な少量のラジオアイソトープを静脈から注入し、体内で放出するγ線の分布を映像化することで癌組織を発見する診断法。ラジオアイソトープの時間的な変動、取り込まれ方などで血流や、臓器の機能を推測することもできる。肝臓癌の発見に有効。
心房細胞
心房全体がまとまった収縮、弛緩を行わず、各部分が不規則に収縮する状態で、毎分350~600回。絶対性不整脈は心房細動によることが多い。原因の疾患は僧帽弁膜症、高血圧性心疾患、バセドウ病、心不全などである。治療薬としては、ジギタリス剤が有効である。
ステロイド
コレステロールに似た化学的性状を持ち、ステロイド核を有する化合物の総称。ステリン、コレステロール、肝汁酸、性ホルモン、副腎皮質ホルモンなどの構成成分である。病院内で使われる言葉としては、薬剤として投与される「ステロイド剤」の略称として用いられることが多い。
ストリップバイオプシー
内視鏡でみながら、早期癌を切り取る治療法の一つ。癌が粘膜内にとどまっており、リンパ節への転移がないもので、直径が1~2cmのものが対象。ポリペクトミーを応用したもので、内視鏡をみながら癌病巣の範囲粘膜下層に注射針を刺し、5~10mlの生理食塩水を注入。癌病巣全体を膨らませ、胃内腔に突出したように隆起させた後、つまみ上げてスネアというワイヤーをかけて締め付け、高周波電流を通じて切断するもの。
脊髄小脳変性症
脊髄、小脳に変性が生じ、手、足、下、口唇などの失調を起こす疾患。物をつかんだり、文字を書くことができなくなり、歩行障害が起こり、進行する。
組織検査/生検(バイオプシー)
癌の疑いのある場所の組織などを、内視鏡などによって少量採取し、薄い切片にして顕微鏡などで診断する方法。
尊厳死
人間の尊厳を大切にし、それを保ちながら生をまっとうすること。こうした考えに基づき、自分の生の終わり方を自分自身で選択し、決定する態度での死のことを指す。
代謝拮坑剤
抗癌剤の一種。癌細胞の成長にとって不可欠な必須代謝物質を阻害する性質を持つ。メソトレキセート、5FU、フトラフール、キロサイドなど。
大動脈内バルーンパンピング
広い範囲の心筋梗塞、切迫心筋梗塞、開心術後において、心臓のポンプ機能が不全のケースに対して、胸部大動脈に容量20~40mlの風船を入れ、ふくらませることで冠状動脈の血流量を増加させる補助循環システム。
多発性硬化症
運動麻痺、視力障害、感覚異常などの症状を示し、寛解と悪化をくり返し10~15年くらいの経過で死亡する。20~40歳代で発症する例が多い。脳や脊髄の神経細胞を包んでいる膜の異常と考えられ、副腎皮質ホルモンが使用されるが、根本的治療法は確立されていない。
超音波断層撮影
周波数1~10メガヘルツ以上の超音波を使って心臓や肝臓を断層的に映像化する方法。人体に傷をつけずに臓器の深部を映像化するのに優れている。
超音波ドプラー法
心臓、血管内の血流を、超音波の周波数偏移(ドプラー効果)を用いて運動速度として測定することで、血流の逆流、狭窄流、短絡流を知ることができる。心臓弁膜症や先天性心奇形、血管の狭窄、閉塞病変の診断に使われる。
超音波内視鏡
内視鏡の先端に超音波発振装置をつけ、体腔内から周辺臓器を撮影する装置。胃の中から膵臓や胆道を観察することもでき、胃の粘膜下腫瘍、深達度の診断にも有効である。
天疱瘡
全身に大小の表皮内水泡を形成し、難治性で副腎皮質ホルモンの大量投与を必要とする。天然痘に似ているが、痘瘡ウイルスによるものではなく、自己免疫疾患のひとつと考えられている。
特定疾患/指定難病
厚生省は昭和47年から、原因不明で治療法が未確立であり、かつ後遺症を残すおそれが少なくない疾病、経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず、介護などに著しく人手を要するために家庭の負担が重く、また精神的に負担の大きい疾病を特定疾患と定義し、調査研究斑を組織し、その対策に努めている。いわゆる指定難病といわれ、現在までに対象疾患は30種以上に及ぶ。国による医療費負担制度がとられている。
突発性難聴
突然起こる感音性難聴で、耳鳴り、耳閉感を伴い、時にめまい、吐き気、嘔吐を起こすこともある。原因は不明だが単一ではないと推測されている。治療法は確立されていないが、早期に治療すれば完治するケースも少なくない。
ドナー/レシピエント
臓器移植の提供者をドナー、受容者をレシピエントと呼ぶ。
な~ほの医学用語
尿路感染症
尿路系に感染をきたし、二次的に異常が起こった状態。病原菌には、結核菌、淋菌、グラム陰性菌として大腸菌、アイロゲネス菌、緑膿菌、プロテウス菌、フリードレンデル肺炎杆菌、アルカリ性糞便菌、グラム陽性菌としてブドウ球菌などがある。
パーキンソン病
脳の中枢である錐体外路に変性が起こり、手足のふるえ、筋肉の硬直による運動機能障害、表情の固着、特有の前屈姿勢などの症状が現れる疾患。ドーパミンが著しく減少するのが特徴で、L・ドーバ療法などが開発され、一定程度有効。
肺サーファクタント
肺の界面活性物質で、肺胞壁で作られ、表面張力を低下させる働きを持っている。突発性呼吸窮迫症候群はこの物質の欠乏によって起こると考えられている。
肺線維症
肺の線維組織が異常に増殖し、空咳が出て、呼吸困難をきたす。狭義には間質性肺炎の終末を意味し、広義には肺線維病と間質性肺炎の依存状態をさす。
ハイリスクグループ
高危険群。ある疾患において、一般の人よりも高い頻度で発生する危険性のあると考えられる特定因子をもつ人達をいう。たとえば肺癌ではヘビースモーカー、大腸癌では大腸ポリープがある人など。
皮膚筋炎
顔、体、手足の皮膚が対称的に赤味を帯び、広がって腫瘤状になり、筋力の低下や痛みを伴う病気。時に手の挙上困難、首のささえが悪くなり、発声や嚥下障害なども起こってくる。小児ではしばしば石灰沈着を生じ、生命の予後はいいが、機能障害を残すことが多く、成人では内臓の悪性腫瘍との合併が多い。
ピロリ菌
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因としてストレスが考えられていたが、最近になってこのピロリ菌が深くかかわっていることが判明。いま注目されている細菌だ。胃の末端部分に好んで住んでおり、ウレアーゼという酵素を分泌し、アンモニアを合成。それによって胃酸を中和し自分の身を守っている。
ところが、そのアンモニアは胃の敵。アンモニアによって粘液がはがされ、その結果、胃の粘膜がむき出しになり、胃酸にさらされて炎症、潰瘍へと進展していく。また、ピロリ菌は胃癌に進行する可能性の高い慢性萎縮性胃炎と関係があることも指摘されている。
治療法としては、抗生物質を使っての除菌。完全に除菌できた場合は、潰瘍の再発が非常に低いという結果が出ている。
ファイバースコープ
折り曲げても光を伝達するグラスファイバーの性状を利用し、先端に超小型のカメラを付け、体外から胃や腸、肺の内部を観察する装置。疑わしい組織を生検するため、先端に組織をつまみとる鉗子をつけたもの、超音波の発振装置をつけたもの、結石を取り除くもの、薬剤注入のできるもの、電気メスやレーザーをつけたものなど様々なタイプがある。
副腎皮質ホルモン(コルチコステロイド)
副腎の束状層から分泌されるホルモンで、糖質ホルモン、電解質ホルモン、副腎性性腺ホルモンに大別される。糖質ホルモンのコルチゾンは、強力な坑炎症作用や坑アレルギー作用を持ち、リウマチ性関節炎や喘息の治療薬としても使われている。
プロスタグランジン
ヒト、動物の組織、臓器に含まれ、多様な生理作用をもつ脂肪酸グループでA、B、E、Fの4群が分離されている。血管拡張、血圧降下、気管支拡張の作用や、群によってその逆の作用などがあり、子宮収縮作用を利用した陣痛促進剤や、消化性潰瘍治療薬として用いられている。
プロトコール
癌の化学療法で、抗癌剤の投与法、投与量、投与期間などのあらかじめ決められた手順のこと。いくつかの施設で共通プロトコールで行った治療のデータを分析し、より有効な治療方法の開発が進められている。
ベーチェット病
口腔粘膜の潰瘍や皮膚湿疹、外陰部に膿瘍を生じ、消化器や循環器、精神神経症状など、全身症状へと広がる疾患。特に眼症状では虹彩炎、ぶどう膜炎を起こし重症化すると失明する。20歳代に発症することが多く原因不明。
ペースメーカー
心臓を収縮させる機能や刺激伝導系に異常が生じた不整脈に対し、心臓を電気で刺激し一定の拍動を維持する装置。電気刺激を体外から与えるタイプと植え込み型がある。植え込み型ペースメーカーはリチウム電池の改良と小型化が進んでいる。
ペニシラミン
ペニシリンの水解によって生じる化学物質。銅、水銀、亜鉛、鉛に対して複素環化合物を形成する作用があることから、重金属中毒、慢性関節リウマチの治療に使われている。
便潜血反応
大腸癌早期発見や消化管からの出血の有無を見るために、便の中の潜血を調べる方法。従来、採便前に肉や魚などの食事制限があったが、最近では人血にだけ反応する方法も開発されており、食事制限の必要はなくなった。
放射線療法
癌の発生部位にリニアック、コバルト60、サイクロトロンなどによる速中性子線、陽子線、ネオン粒子などを照射する治療法。
ポリペクトミー
ポリープを摘除すること。外科的な方法と内視鏡につけた電気メスで切除する方法がある。大腸に発生したポリープの多くは癌化するため、発見するとすぐ内視鏡下で切除することが多い。胃のポリープは、癌化しにくいが、症例によってはポリペクトミーが行われる。
ホルター心電図
長時間の心電図が記録できる携帯用の機器で、普通は24時間連続して記録し、コンピューターで解析する。これによって、自覚症状と不整脈の対応、一過性不整脈の検出、仕事中や睡眠時の不整脈、心筋虚血の検出などができるようになった。
ま~わの医学用語
マイクロサージャリー
手術用顕微鏡を使って行う微細手術。脳腫瘍や脳動脈瘤などの脳内手術や、末梢神経の吻合手術、血管吻合、眼の手術などで応用される。
マイコプラズマ
ウイルスと細菌の中間的性質を持つ微生物のひとつ。呼吸器系に感染し、肺炎を起こしたりするものもある。
慢性閉塞性肺疾患
病態生理的、臨床的に類似した疾患群で、慢性肺気腫、気管支喘息、慢性気管支炎の総称。特徴としては (1)気道の広範かつ慢性の狭窄 (2)閉塞性パターンの低下、気道抵抗の上昇 (3)肺内ガス分布の異常 (4)肺胞内ガス交換の障害 (5)せき、呼吸困難、聴診上の喘鳴 (6)末期に肺性心を起こす、などである。
メニエール病
平衡障害、めまい、難聴、耳鳴などの症状で、中枢障害や既知の原因疾患から除外されるものを言う。自律神経やホルモンの変調と考えられるが、原因は不明。
免疫グロブリン
血清蛋白の総称。IgG、IgM、IgA、IgD、IgEの5クラスの分けられる。免疫グロブリンが特定の抗原を識別し、結合すると、体内に侵入した異物(抗原)は、毒性を発揮することなく、いくつかの過程を経て、体外に排除されていく。これを免疫反応という。
免疫賦活剤(めんえきふかつざい)
免疫能を高めるために使用される薬剤で、インターロイキン、BCG、CWS、CK432などがある。
免疫不全症候群
一度病気にかかっても免疫ができない、予防ワクチンで免疫力ができない、という先天的な疾患。リンパ球、好中球、マクロファージなどの食細胞の免疫遂行因子の欠陥によって引き起こされると考えられるが、成因はわかっていない。
免疫抑制剤
異常免疫反応を抑制するもので臓器移植後の生体の拒絶反応を抑制したりする薬。ノルウェーの土中の特殊なカビから発見されたシクロスポリンAによって、世界の臓器移植は飛躍的に進展した。さらに進んだ免疫抑制剤として、副作用の少ないOKT3、デオキシスペルガリンなども登場している。
モノクローナル抗体
バイオテクノロジーによって作り出された単一のクローン抗体。特定の抗原に作用する抗体を量産できるようになったことで、癌における蛍光抗体法、ミサイル療法などの進展に結びついている。
モヤモヤ病(脳底部異常血管網症・ウィリス動脈輸閉塞症)
脳底部の主幹動静脈、とくにウィリス動脈論という部分の狭窄や閉塞で、これを補うために細い副側血行路がモヤモヤと糸くずのようにできる疾患。乳児から老人まで発病し、乳幼児では片麻痺、言語・知能障害、失明の原因となる。日本人に多く、約半数は15歳以下。
薬物耐性
薬物の反復連用により、はじめ著明な効果があった薬剤が、治療しているうちに次第に高濃度でも効果が落ちる現象。化学療法のひとつの問題点で、スルホンアミド剤、抗生剤などでよく見られる。薬物耐性菌が出現するのが原因で、突然変異と選択、誘導、エピゾーム性耐性因子の感染、耐性菌DNAによる転換など、様々な学説がある。
予後
ある病気または患者の経過や結末のこと。治療の予後、生命の予後、社会復帰に関する予後、視力や運動能力の予後などというように用いられる。
リニアック
高エネルギーX線治療装置。体外から的確な放射線照射範囲、量、方向を選ぶことができる。乳癌、食道癌その他多くの癌に広く使用されている。
リンパ節郭清
癌摘出手術の際に転移の疑いのある周辺のリンパ管の球状組織を取り除くことをいう。
レイノー病
基礎疾患がみられず、小動脈の発作的収縮によって起こる一次性のものと、外傷、振動工具使用、神経疾患、動脈閉塞性疾患、重金属中毒、膠原病などによる二次性のものとがある。
レーザーメス
レーザー光の熱効果で、生体を凝固、炭化、気化蒸発させるというもの。組織の凝固止血にも用いる。電気メスに比べ出血量が少ないという利点がある。

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