バリアフリーへ融資多彩

高齢者向け住宅に的を絞った融資制度や助成制度が充実してきた。高齢者が住みやすいバリアフリー(障害排除)住宅への改築ローンなども定着してきた。「終(つい)の住み家」をより住みやすくするためのサービスを調べてみた。

最近、利用が広がっているのが住宅をバリアフリーにするリフォームローンだ。段差をなくし、手すりを付け、風呂やトイレに不自由なく行き来できるようにする改修工事などが対象で、融資条件を優遇する金融機関が相次いでいる。

高齢者向けの主な住宅ローン
サービス 内容 主な金融機関
リフォームローン バリアフリーの工事費用を融資。
金利や融資限度額の優遇もあり
住宅金融公庫、UFJ、三井住友銀行など多くの民間金融機関
親子リレー型の住宅ローン 二世帯住宅向け。親がローンを完済できない場合に子供が返済を引き継ぐ みずほ、東京三菱銀行などの民間金融機関
生前元本払い不要のリフォームローン 生前の支払いは利息分だけ。元本分は本人の死後に物件処分や相続人が支払いで完済 住宅金融公庫

住宅金融公庫のリフォーム融資では、改築の際にバリアフリー工事を選ぶと、金利が現在で年2.20%から2.10%に低くなる。借入限度額も通常の融資枠より150万~250万円上乗せできる。UFJ銀行は、同行が提携する工務店が建てた高齢者向け住宅を購入した場合、ローン金利が通常より0.1~0.3%低くなる優遇サービスを提供している。

一方、みずほ銀行はバリアフリー工事以外にも融資対象を広げた「介護ローン」という商品を取り扱っている。「寝起きしやすい特殊ベットや車椅子の購入資金にも使える」(同行)のが特徴だ。

高齢者向け金融サービス続々

ただ高齢者にとって、定年後に思い切った住宅改築に踏み切るのは、収入面などで不安がつきまとうものだ。そんな悩みを解消するローンもある。

住宅公庫は毎月の支払いが利息分だけで住むリフォームローン(高齢者向け返済特例制度)を取り扱っている。一戸建ての住宅を保有する六十歳以上の高齢者がバリアフリー工事をする場合が対象で、利息分以外の元本の支払いは死亡時に物件を処分したり、相続人が一括返済したりすればいい。

資産価値がある不動産を持っていればこのサービスを活用でき、返済の心配を和らげられる。マンションの立て替えでも同じような特例制度がある。

高齢者向け住宅についての相談窓口
相談窓口 内容
高齢者住宅財団
03(3206)6437
バリアフリーリフォーム
融資制度などに関する相談
高齢者住環境研究所
03(3377)6490
第三者の立場で高齢者リフォームの設備など建築的な相談に応じている
住宅リフォーム・紛争処理支援センター相談室 リフォームを含む住宅全般について相談に応じている

※この他厚生労働省、市区町村に介護保険などの相談窓口がある

金利優遇、枠拡大(介護保険制度の活用も)

二世帯住宅向けのローンの利用も広がっている。住宅を購入したものの親が生前にローンを払い切れない場合、子供が返済を引き継ぐ「親子リレー型」で、親と子供が住宅ローンの連帯債務者となる契約を結ぶ。みずほ銀行など民間金融機関が扱っており、土地持ちで子供が同居する意思があるならば、お薦めのローンと言える。

老後の住宅リフォームで忘れてはいけないのは、65歳以上で要介護の認定を受けた場合に、住宅改修費支給制度を利用できる点だ。段差の解消、扉の取り換え、便器の取替えなどの改修工事(最大20万円)について、一割を自己負担するだけで残りの費用を公的介護保険から受けられる仕組みだ。

利用は基本的に一人一生涯20万円までだが、要介護の度合いが上がった場合や、転居した際には再度利用できる。最近では、東京都品川区など介護認定を受けていない人向けに国並みの助成をしたり、利用範囲を広げている自治体も増えている。自分の住んでいる自治体に、利用できる制度があるかどうかを確認してみよう。

あと数年で団魂の世代が次々と定年時期を迎える。このため今後、一段と高齢者向けの住宅融資や助成制度などが充実しそうだ。老後を快適に過ごすためにも、高齢者向け住宅に関する相談窓口(表参照)などを活用し、賢く使える制度はないかどうか、こまめにチェックしておく必要がありそうだ。

日本経済新聞 2003年6月1日より抜粋

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