傾聴ボランティア

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ボランティアを始めて一年が過ぎました。
2003年(平成15年)8月9日にシニア・ピア・カウンセラー要請講座が終了し、貴協会から紹介された地元(国分寺)の「家族の家ひまわり国分寺」を8月31日に見学させていただき、その場で施設長にボランティアで活動させていただくことの了解を得、9月6日(土)からスタート。平日は勤めがあるため週末で時間の空く土曜日の午後に3〜4時間以内と決めて始めました。

要請講座を受講したのは、2002年の秋以降に母(当時87歳)の容体の激変したことが切っ掛けでした。
朝手押し車で散歩に出て初めて道に迷ってしまい、近くのコンビにから電話を掛けてもらい迎えに行ったこと、その後体が急に動かず話も満足にできなくなったこと、夜間トイレに行くことを面倒がり水分をとらなくなったことや、老化の進行が進んだことが関係あるように思います。
医者ははっきりとした原因は分からないがそのようなことを診断されました。

その後数日してからのこと、夜トイレに行こうとして寝室を出たところで下半身丸出しでおしっこだらけになった母を、気づいた父が助け起こそうとして転んでしまい、自分も動けなくなったこと。
父は元々足腰が弱く、続けて3~5メートルぐらい歩くのが精一杯。そんな父が倒れている母を起こそうとしたのだから無理もありません。

言葉を発することが出来ずうんうん言っている母の側で、自らも動けず2階で寝ていた私と妻に知らせようして、父は側にあった流し台の扉を開け閉めしてその音で階上にいる我々に知らせてくれました。
それからは救急車で病院へ。左大腿骨骨折と診断された父はそれでも手術に耐え、入院中はリハビリして徐々に回復し、一方口もきけるようになった母は認知症状が急速に進行し、且つ父がいなくなったことがかなり不安だったようで、妻に対する暴言(父の愛人と勘違い)、またある日勤めから帰った私が分からず「おまえは誰だい?」。

私はそのような母が受け入れられず、父の見舞いや仕事で疲れていたこともあり、認知症気味の母につらく当たることしばしば。それに対して母は益々怒り「お前はこんな子ではなかった!」(私を認識できるようにはなっていました)。
が、転院した父は、持病に肺気腫があり、最初の入院から2ヶ月半で亡くなりました。92歳でした。最後の3日間は父の側に付き添いました。意識のない父にこれまで育ててくれたことを何度も何度も伝えましたが、反応はなく、涙が止まりませんでした。

父の死後、母の認知症状はいわゆる「まだら呆け」というような様子で、母を助けようとしたことで父が入院し、その母が勝手なことばかり話すため、私は母を責める気持ちが拭えませんでした。
私は休みの日は朝からアルコールを飲み、ひとりになると涙が出、精神的に追い込まれていくのが分かりました。

そんなとき、養成講座開講のことを知り(数年前にある週刊誌で傾聴ボランティアのことを読み、なんとなく興味があり、その切り抜きをとっておりました)飛びつくようにして申し込みました。母の言うことをまともに聴けない私が他人の言うことをきくなんて変ですが。

週末に通うホーム(家族の家ひまわり国分寺)では、傾聴というよりいつのまにかお年寄りの茶飲み相手のような感じになっています。
ここは70歳代から100歳を超える方たちまで約60名がいらっしゃいます。この春からは月に2回と思って通っております。認知症の進んだ方もおり、私を家族と間違えていたり、ひとりで壁に向かって話しをされたり、私を怒ったり、と。

ご病気のせいで全身ほとんど麻痺しているあるおばあちゃんは、毎週顔を合わせるとにっこり笑ってくれます。このおばあちゃんは言葉をうまく発することが出来ないのですが、それでも慣れてくると何を言っているのかよく分かります。

ある時私が「睡蓮」という絵を昨日美術展で観ました、と言いかけたらすぐに「モネね」(モネでしょう?)と。とても絵が好きだったこと、また短歌も勉強していたこと、など、車椅子で身を左右にひねることも出来ず、正面からしか話かけられませんが、伺うといろいろなことが、金貨のようにざくざくと出てきます。

私は平日はメーカーの貿易部署に席を置き、日々効率、効率の毎日です。福祉、介護とは無縁でした。ボランティアとも。今私は48歳。親の介護などはもっと先のことだと思っていましたが(もっとも父母は高齢でしたからそんなに先のことでは元々はなかったのでしょうが)、ボランティアを始めた切っ掛けは父母です。そしてボランティアは自分のためにしているような気がします。最近は単なる茶飲み相手のような自分に物足りなさを感じておりますが。

同期の中辻さんや他の皆様が元気に活動されていることに励まされ、とても嬉しく思います。世の中にはいい人がたくさんいるんだなあ、と。

私に機会を与えてくださった協会の皆様や同期の方々、先輩の皆様どうも有難うございます。

月刊ホームファミリーケア 平成16年(2004年) 11月号掲載

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