介護報酬の仕組み
介護報酬の基本構造
介護報酬の基本構造は、図表1のように、(A)基本単位・(B)その他の算定・(C)加算の3要素から成り立っています。(※1)
そして、(A)(B)(C)により算定した単位数を、(D)金額換算において地域別に5区分された「換算レート」を乗じることにより、具体的な介護報酬の金額を求めます。
図表1 : 介護報酬の基本構造介護報酬の基本単位
基本単位
介護報酬は、個々の介護サービスの行為についての算定ではなく、サービスの種類ごとに介護サービスの内容を標準化し、サービス提供1回または1日当たりの基本単位を包括的に定めています(※2)。
サービスの種類ごとに標準化するといっても、1つのサービスに対して基本単位が1つだけしか定められていないものは、きわめて少数です(※3)。多くは、提供されるサービスの内容、事業所の類型、職員配置、利用者の要介護度ランク、サービスの所要時間などの組合せにより、1つのサービスを細分化し、それぞれについて異なる基本単位を定めています。
サービス内容と基本単位
提供されるサービスの内容により1つのサービス細分化し、それぞれについて、異なる基本単位を定めるものがあります。
- 訪問介護(3類型)
- 居宅療養管理指導(4類型)
- 通所介護(2類型) (※4)
事業所類型と基本単位
提供されるサービスの内容ではなく、サービスを提供する事業所の違いに応じて、それぞれに異なる基本単位を定めるものがあります。通所サービス、短期入所サービス、施設サービスに多く見られます。
- 訪問看護(2類型)
- 通所介護(2類型) (※5)
- 通所リハビリテーション(2類型)
- 短期入所生活介護(2類型)
- 短期入所療養介護(6類型)
- 介護福祉施設サービス(2類型)
- 介護療養施設サービス(4類型)
職員配置と基本単位
介護保険施設では、事業所類型と組み合わせて、看護職員および介護職員の配置の違いに応じた基本単位の差異を設けています。また、これらの介護保険施設で行われる短期入所生活介護や短期入所療養介護も同様に区分されます。
- 介護老人福祉施設(3類型)
- 介護老人保健施設(2類型)
- 病院療養型病床群(4類型)
- 診療所療養型病床群(2類型)
- 老人性認知症疾患療養病棟(4類型)
- 介護力強化病院(4類型)
要介護度ランクと基本単位
介護報酬の基本単位は、サービスの種類によって、利用者の要介護度ランクの影響を受けるものと受けないものがあります。居宅サービスのうち訪問型のサービスは要介護度ランクの影響を受けません。
また、要介護度ランクの影響を受ける場合でも、「要支援」から「要介護5」までの6段階(認知症対応型共同生活介護および施設サービスは「要支援」を除く5段階)に区分されるものと「要支援」「要介護1・2」「要介護3・4・5」の3段階に区分されるものとがあります。
要介護度ランクの影響を受けないサービス(6種類)
- 訪問介護
- 訪問入浴介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導
- 福祉用具貸与
要介護度ランクにより3段階区分されるサービス(3種類)
- 通所介護
- 通所リハビリテーション
- 居宅介護支援
要介護度ランクにより6(5)段階区分されるサービス(7種類)
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護
- 認知症対応型共同生活介護
- 特定施設入所者生活介護
- 介護福祉施設サービス
- 介護保健施設サービス
- 介護療養施設サービス
所要時間と基本単位
居宅サービスのうち、訪問通所系サービスには、サービス提供の所要時間により区分されるものがあります。
- 訪問介護
- 訪問看護
- 通所介護
- 通所リハビリテーション
介護報酬の「その他の算定」
「その他の算定」とは、通常とは異なるサービス内容、職員、所要時間などによるサービス提供が行われる場合に、基本単位そのものを変更する機能を果たすものです。
サービス内容の変更による算定
- 訪問入浴介護(清拭・部分浴を実施した場合)
- 施設サービス(施設外泊の場合)
職員基準による算定
- 訪問介護(訪問介護員3級が行なった場合、2人で行なった場合)
- 訪問入浴介護(訪問介護員人で行なった場合)
- 訪問看護(准看護師が行なった場合、理学療法士・作業療養士が行なった場合)
- 短期入所生活介護(同上)(※6)
- 短期入所療養介護(同上)(※6)
- 施設サービス(夜勤基準を満たさない場合)
所要時間による算定
- 通所介護(所要時間2時間以上3時間未満の場合)
- 通所リハビリテーション(同上)
介護報酬の加算
加算
「加算」とは、基本単位で評価される標準的なサービスに対して、「オプション」と位置づけられる付加的な部分を評価し、基本単位に一定率または一定単位を割増しするものです。また、これとは逆に、一定率または一定単位を割り引く「減算」がありますが、考え方は同じです。
- 訪問介護
- 訪問入浴介護
- 訪問看護
- 福祉用具貸与
- 居宅介護支援
特別地域に対する加算
離島その他の地域に所在する事務所がサービス提供を行った場合に加算されます。次の居宅サービスに設けられています。
- 訪問介護
- 訪問看護
時間帯に対する加算
夜間・早朝または深夜にサービス提供を行った場合に算定する加算です。次の居宅サービスに設けられています。
職員配置・サービス体制に対する加算
職員配置やサービス体制が通常よりも充実している場合の加算、通常の基準を満たさない場合の減算があります。介護保険制度は、機能訓練・リハビリステーションによる要介護状態の悪化防止を重視していることから、機能訓練・リハビリ体制を評価した加算が多数設けられています。
機能訓練・リハビリ体制による加算
- 訪問介護
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護(※7)
- 特定施設入所者生活介護
- 介護福祉施設サービス
- 介護保健施設サービス
職員配置による加算
- 短期入所療養介護(医師配置減算、夜間勤務等看護)(※8)
- 介護福祉施設サービス(常務医師配置加算、精神科医療養指導加算、障害者生活支援体制加算)
- 介護療養施設サービス(医師配置減算、夜間勤務等看護)(※8)
その他の体制による加算
- 訪問看護(緊急時訪問看護加算)
施設環境に対する加算
医療系施設において行われる短期入所療養介護や介護保険施設サービス、介護療養施設サービスには、施設環境による加算・減算が設けられています。
認知症専門棟加算
- 短期入所療養介護(※9)
- 介護保険施設サービス
療養環境減算
付加的なサービスに対する加算
通所サービスや短期入所サービスでは、食事の提供や入浴介助、送迎に対する加算が設けられています。
新規の入居者・入所者・入院患者に対する初期加算
施設サービスおよび入居型の居宅サービスには、新規の入所者・入所者・入院患者について、30日間を限度として、初期加算を設けています。
- 認知症対応型共同生活介護
- 介護福祉施設サービス
- 介護保健施設サービス
- 介護療養施設サービス
特別な管理指導に対する加算
医療系の居宅サービスにおける特別な管理指導、介護保険施設を退所する際の相談援助や指導、訪問介護指導などに対して、加算が設けられています。
医療系居宅サービスの特別管理指導加算
- 訪問看護(特別管理加算、ターミナルケア加算)
- 居宅療養管理指導(麻薬管理指導加算)
- 通所リハビリテーション(訪問指導等加算)
施設サービスの退所(退院)時相談援助・指導加算
- 介護福祉施設サービス
- 介護保健施設サービス
- 介護療養施設サービス
老人訪問看護指示加算
- 介護保健施設サービス
- 介護療養施設サービス
介護報酬の金額概算
金額換算
介護報酬は「単位」で表され、(A)基本単位・(B)その他の算定・(C)加算の3要素について算定した単位数について、最後に(D)金額換算において示される「換算レート」を乗じることにより、具体的な介護報酬の金額を求めます。
この換算レートには、図表2のとおり、全国を「特別区」 「特甲地」 「甲地」 「乙地」 「その他」に5区分し、サービスの種類によっても違いがあります。
図表2 : サービスの種類別にみる1単位の金額
特別区 | 特甲地 | 甲地 | 乙地 | その他 | |
(1)訪問介護 | 10.72 | 10.60 | 10.36 | 10.18 | 10.00 |
(2)訪問入浴介護 | 10.72 | 10.60 | 10.36 | 10.18 | 10.00 |
(3)訪問看護 | 10.48 | 10.40 | 10.24 | 10.12 | 10.00 |
(4)訪問リハビリテーション | 10.48 | 10.40 | 10.24 | 10.12 | 10.00 |
(5)居宅療養管理指導 | 10.00 | 10.00 | 10.00 | 10.00 | 10.00 |
(6)通所介護 | 10.72 | 10.60 | 10.36 | 10.18 | 10.00 |
(7)通所リハビリテーション | 10.48 | 10.40 | 10.24 | 10.12 | 10.00 |
(8)短期入所生活介護 | 10.48 | 10.40 | 10.24 | 10.12 | 10.00 |
(9)短期入所療養介護 | 10.48 | 10.40 | 10.24 | 10.12 | 10.00 |
(10)認知症対応型共同生活介護 | 10.72 | 10.60 | 10.36 | 10.18 | 10.00 |
(11)特定施設入所者生活介護 | 10.72 | 10.60 | 10.36 | 10.18 | 10.00 |
(12)福祉用具貸与 | 10.00 | 10.00 | 10.00 | 10.00 | 10.00 |
(13)居宅介護支援 | 10.00 | 10.00 | 10.00 | 10.00 | 10.00 |
(14)介護福祉施設サービス | 10.48 | 10.40 | 10.24 | 10.12 | 10.00 |
(15)介護保健施設サービス | 10.48 | 10.40 | 10.24 | 10.12 | 10.00 |
(16)介護療養施設サービス | 10.48 | 10.40 | 10.24 | 10.12 | 10.00 |
介護報酬算定の通則
算定の際の端数処理
介護報酬の単位数の算定に際しては、基本単位に「その他の算定」や「加算」を行なう度に、1単位未満の端数処理を「四捨五入」します。
また、算定された単位数から金額換算する際には、1円未満の端数を「切捨て」により処理します。
例題1訪問介護の「身体介護中心型・所要時間30分以上1時間未満」を訪問介護員3級が夜間に行った場合の単位数を算定せよ
正解
- 訪問介護員3級 402単位×95%=381.9単位(→382単位)
- 夜間加算 382単位×25%=95.5単位(→96単位)
- 加算の結果 382単位+96単位=478単位
- 478単位×5回=2,390単位
- 2,390単位×10.72円=25,620.8円(→25,620円)
訪問介護の身体介護中心型・所要時間30分以上1時間未満の基本単位は402単位です。訪問介護員3級が行なった場合は、基本単位の95%を算定します。また、夜間のサービス提供については、基本単位または「その他の算定」により算定された単位数の25%を加算します。ここで402単位×95%+402単位×95%×25%=477.375(→477単位)と、1つの式で計算するのは誤りです。
例題2例題1のサービスを、「特別区」において1か月に5回提供した場合の介護報酬の金額を求めよ
正解
金額換算の際には、単位数の算定とは異なり、1円未満を「切捨て」とすることに注意が必要です。